ただいま逃走中!

2013.03.24.sun/箕面マーケットパークヴィソラ

ただいま逃走中!

3月24日(日曜日)、早朝。
人通りの絶えたショッピングモール、始業前の箕面マーケットパークヴィソラに、時ならぬ足音が響きます。
「き、来たーっ!」
おびえて駆け出す子どもたち。
その後ろから追いかけてくるのは、黒ずくめの男たちでした。

人気番組「逃走中」を、自分たちの街でもやってみたい…。
昨年実施された「『まーぶ』こどもの夢コンテスト」(主催:こども通貨会議)への応募アイデアが採用され、実現することになりました。実行委員会には子どもも大人も参加して、会合を繰り返しながら企画を詰めていきました。

いよいよ当日。
朝7時30分、みのお市民活動センター前に集合したのは、箕面市内の小学4年生32名。大きく番号の入ったビブス、帽子、そして全員が携帯電話を持ちます。

●「逃走中」のルール
・ハンターに捕まらないように逃げる。
・長く逃げればそれだけ賞金が増える。
・捕まったら「牢屋」行き。賞金はゼロに。
・途中で「自首」すると、その時間までの賞金の半額をもらえる。ただし復活はできない。
・途中でさまざまな「ミッション」がメールで伝えられる。ミッションを完遂すれば有利にゲームを進めることができる。
・牢屋行きになっても、ミッションの進み具合で、復活できる可能性がある。

7時50分。いよいよゲームの開始です。
一斉に走り出す子どもたち。
その背後に現われたのは、黒いスーツに黒のサングラス、不気味な姿の「ハンター」たちでした。無言で無表情のまま、悠然と、しかし着実に、冷酷に獲物を追いつめていく姿は、どこか機械的なイメージ。本当に、人間なのでしょうか…?
その視界に、鮮やかなビブスの色が映りました。ターゲットを認識したハンターは、全力疾走に移ります。算を乱して逃げ惑う子どもたち、ぐんぐん縮まっていく距離。

ああ、捕まった…!

「赤の5番を確保しました」
本部に状況を連絡するハンター。捕まった子は、次々と牢屋へ送られていきました。
圧倒的な脚力を誇るハンターの前に、逃走者側は苦戦を強いられていました。
このままでは、全滅は時間の問題です。
そのとき、生存者の携帯から、一斉に着信音が。「ミッションだ!」

“暗号を解き、難局を打開するスーパーアイテムをゲットせよ”

ハンターの目をかいくぐり、とらわれの仲間を救出すべく、子どもたちは危険で困難なミッションに挑んでいきました。

そのころ、牢屋では捕まったもの同士による、解放を賭けた凄絶なサバイバルが展開されていました。
「これから行うゲーム、勝ち残った3名だけを復活させてやろう」
牢屋の子どもたち、その間に芽生えた連帯感をぶち壊す、血も涙もない牢番の策略でした。あろうことか、昨日の友は今日の敵に早変り、自分以外は全員敵。牢屋の中で繰り広げられる過酷なバトルロワイヤル、そのゲームとは…

「しっぽ取り」でした!

闘争の果てに、ようやく自由を手に入れた3名。
そこへまた、黒服が迫ります。
仲間同士のバトルに消耗した子どもたちに、逃げ切る力は残っていませんでした。
ネズミをもて遊ぶ猫のような、それは悪らつな仕打ち。なんと非道な…!

ゲームの終了時間(9時30分)が近づきます。
生存者は、もういくらも残っていません。
本部に届く情報。残り4名…3名…2名…そしてとうとう、たった一人を残すのみとなりました。

ああ、どうか逃げ切って…!

ついに、カウントダウンが始まりました。
10!9!8!7!
捕まった子どもたちの大合唱。
6!5!4!3!
そして、ついに。
2!1!
「ゼロ!!」

タイムアップ!
「やったー!」歓声が、ヴィソラの建物にこだましました。

表彰式。
途中で自首した二人には、その時間に応じて賞金が通貨「まーぶ」で渡されました。
最後まで生き残った、西小学校4年の伊森奈々(いもり・なな)さんには、賞金5400まーぶ。
「逃げ切れてむっちゃ嬉しかったです。終了間際は、ドキドキして興奮状態でした」
木の陰にうまく隠れてハンターをやり過ごしたという奈々さん、賞金は次の「子どもの夢コンテスト」に使いたいと話しました。
 発案者であり、自らも参加した西小学校4年の遠藤圭亮(えんどう・けいすけ)さんは「コンテストのチラシを見てアイデアを応募しました。採用されて嬉しかったです」
ゲームについては「残り25分ほどで捕まってしまい悔しかった。ミッションにも参加したかったけど、ハンターがうじゃうじゃいてできなかった」と語っていました。

ゲームの進行には、見張り役、本部スタッフ、撮影係など、多くの大人が関わりました。子どもの夢に向き合い、その実現に向けて全力で応える姿がそこにありました。
戦い終えた黒服のハンターたち、外したサングラスの下から、笑顔がこぼれました。
良かった…やっぱりこの人たち、人間だった(?)。

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