「花フブキよ、永遠に!」…みのおキッズシアターwith末成由美 第13弾

2018.09.02.sun/メイプルホール

「花フブキよ、永遠に!」…みのおキッズシアターwith末成由美 第13弾

吉本新喜劇の人気女優・末成由美さんと箕面の子どもたちが作り上げるステージ「みのおキッズシアターwith末成由美」。
9月1日(土曜日)・2日(日曜日)の二日間、メイプルホールで上演されました。
 13年目、第13弾となる今回は「花フブキよ、永遠に!」編。開発により変わっていく運命の山奥の村を舞台に、末成さん扮する老木の精が、子どもたちと心を通わせていく物語を繰り広げました。
 出演は、公募で集まった小学3年生〜高校3年生まで、役者19人・ダンサー9人。吉本でおなじみのギャグも交えつつ、3カ月の稽古の成果を大舞台でのびのびと演じ切った子どもたちに、大きな拍手が送られました。

<あらすじ>

とある町の何でも屋さんに届いた、奇妙な依頼の手紙。
「私はおばあさんです。私が小さい頃に見た、きれいな花が見たいのです」
一本の老木に、かつて一度だけ咲いた花。それをもう一度、咲かせてほしい・・・。
何の木かもわからないまま、何でも屋の面々は、依頼人のいる山奥の村へ出発するのでした。

その山奥の村は過疎が進み、小学校も来年には廃校に。
夏休みの登校日で学校を訪れた子どもたちが、わいわいと話している途中で、突然アマネという女の子が泣き出しました。
「大好きだったおばあちゃんのことを思い出して・・・」
そのおばあちゃんが、子どもの頃仲良しだったという一本の老木。
死ぬ前に、かつて一度だけ咲いた花を、もう一度見たいと言っていた。
その木を探しに行きたい・・・。

その頃、山の見晴らしの良いところに、怪しい老人と秘書の姿が現れました。
老人はこの村で大規模なプロジェクトを進めようとしている会社の社長でした。
「それにしても社長、どうしてこんな山奥でわざわざ開発を?」
何やら訳がありそうですが・・・。

その山に棲む、山神や精霊たち。
人間たちの開発計画が進めば、木々は切られて動物たちも住めなくなってしまいます。
そこで山神は、水の精・土の精・セミの精を呼び出し、人間の姿を与えて、村へと送り出します。人間の間に一石を投じて、なんとか開発を食い止められれば・・・。
しかし、三人が出発した後で、若木の精の宿る木が切られることが判明します。
それを食い止めるために呼びだされたのは、老木の精(末成由美)。
先行した三人に若木のことを伝え、切られないための算段をすること。
老木の精が与えられたのは、おばあさんの姿でした。
実は老木の精、村にどうしても会いたい人がいるといいます。
その人とは・・・。

村に到着した何でも屋の一行。
ところが、依頼人の手がかりは、一枚の写真だけ。
そこには、おばあさんと子どもたちが写っていました。
「名前も住所もわからないのに、探せるわけが・・・ああっ!?」
たまたま通りかかったアマネと兄のリンタロウ。見慣れない人たちを不審がりながら駆け去った二人は、まさしく写真に写った人物でした。
それっ、追いかけるぞ!

そのアマネとリンタロウは、クラスメートのサクラと一緒に、おばあちゃんの友だちの木を探しに山の中へ。
「うわー、すごい眺め!」
美しい自然の中で、さっきまで泣いていたアマネも機嫌を直しました。
そこへやって来たのは、ルイとショウタの男子コンビ。
「おい、この村をめちゃくちゃにする悪の組織を見つけたぞ!」
二人が言っているのは、あの開発会社の社長と秘書のことでした。
一緒に行って、怪人をやっつけようという二人ですが、リンタロウはおばあちゃんの木を探す方が大事。言い合いになり、アマネはまた泣き出してしまいます。
そこへやって来たクラスの女子たちが、泣かせたのはサクラだと思いこみ、全員が険悪なムードのまま、喧嘩別れに・・・。

老木の精が会いたい人というのは、昔いつも会いに来てくれていた、由美という少女のことでした。村の中をうろつきながら探し回る老木の精、それに出くわしたリンタロウとアマネは驚き、「おばあちゃん!」と叫んで抱きつきます。死んだはずのおばあちゃんがいる、でも幽霊でもいい・・・。隙を見て逃げ出す老木の精、すると今度は何でも屋の一行とばったり。「あっ、写真のおばあさん!依頼人や!」と追いかけてくる一行を振り切って、やっと一息・・・。そこへ現れた、あの謎の社長が「由美?・・・お前は生き別れになった、妹の由美か?」
どうやら老木の精が与えられた人の姿は、由美というおばあさんとそっくりだったようです。

「こうなったら、俺たちだけで悪の組織を倒すぞ」
ルイとショウタが気勢を上げているところへ、水・土・セミの三人の精が通りかかります。誰かと聞かれて、精霊というわけにもいかないので「山を守る、山レンジャー!」ということに。すっかり意気投合し、ルイとショウタも加わって、みんなで悪の組織に立ち向かおう!

老木の精と、アマネ・リンタロウ、何でも屋、社長の面々は、話し合って事情を理解しました。
何でも屋におばあさん名儀で手紙を出したのは、リンタロウ。
その理由は、おばあさんの存命中にもう一度、老木に咲く花を見せてやりたかったから。
社長は二人のおばあさん・由美の実の兄で、二人にとっては大伯父さんということに。
由美は子どもの頃、他の子となじめず、老木だけが友だちでした。
山の中で、孤独な少女と木が語らう、安らかでかけがえのない時間。
それは、悲しくも美しい思い出のひとコマでした。
あるとき由美は、いつも自分をいじめていた他の子に、勇気を振るって立ち向かって行きます。そのことを話してくれた由美へ、老木は満開の花で応えます。祝福の花吹雪が乱れ飛ぶ、夢のような光景・・・。
そのことがあってから、由美はもう山へ行くことはなくなり、長い年月が流れました。
語り終えた老木の精。
そこへ迎えにやって来た山神と若木の精に、老木の精は一つの提案をします。
「切られる予定の若木と、自分を入れ替えてほしい」

学校では、子どもたちが集まっています。
行き違いがあって、険悪になってしまったこと。
みんなが非を認め合い、元の絆を取り戻しました。
話し合う中で、若木が切られることを知った子どもたちは、老木との入れ替えを「自分たちの力でやろう」と一致。
手に手にシャベルを持ち、全員が力を合わせて、一心不乱に掘っていきます。汗は止めどなく流れ、手のマメが潰れ、慣れない作業にあえぎながら、それでも誰一人止めようとはしません。若木を、この村の自然を守るため。開発という巨大で理不尽な力から、自分たちの大切なものを、わずかでも取り戻すため。
そのとき突然、山の方から不思議な光が。

き れ い ・ ・ ・ 

それは、あの老木でした。
かつて一度だけ咲いたという、伝説の花。
見たこともないほどの、凄まじい光の乱舞となって辺りを埋め尽くす花びらの奔流。
老木は最後の力を振り絞って、アマネの、リンタロウの、子どもたちの思いに応えたのでした。

一堂に会した登場人物たち。
社長の計画は、乱暴な開発ではなく、この村に活気を取り戻すため、自然と調和したものであること。若木も切られずに済むことがわかり、一同は安堵します。
結局、あの老木は枯れて、その命を終えました。
老木を悼むみんなに、どこからともなく声が聞こえてきます。
それは、老木から感謝を伝える、最後の言葉でした。

みなさん、ありがとう。命の最後に、出会えてよかった。私はこれから、由美ちゃんに会いに行きます・・・

別れの言葉を送りながら、一同はいつまでも、声が消えていく虚空を見つめていました。

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