第七回箕面芸術祭 レビュー「銀河鉄道の夜」

2012.03.10.sat/メイプルホール

第七回箕面芸術祭 レビュー「銀河鉄道の夜」

多くの市民が参加して上演される「箕面芸術祭」も、今回で七回目を迎えました。
作品は、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。一般公募の役者、コーラス隊、バレエ教室や日本舞踊、ダンスサークルなどが参加して、荘厳な賢治の作品世界を舞台上に表現していきました。
上演は、
(1)3月10日(土曜日)午後6時30分
(2)3月11日(日曜日)午後2時
二回とも、メイプルホールの大ホールは観客でいっぱいになりました。

物語は、宮沢賢治の弟・清六が、未発表の作品を見つけるところから始まります。ページをめくるうちに、舞台はいつしか物語の中になっていました。
 少年ジョバンニは、病気の母を支えるため、放課後は活版所で働いています。友だちと遊ぶ時間もなく、クラスでは浮いた存在です。ケンタウル祭の夜、ジョバンニが一人で草原に寝転んでいると、どこからともなく汽車の音が聞こえてきました…。
 気がつくと、そこは銀河を往く列車の中。向いには、親友のカムパネルラが座っていました。
「母さんは、ぼくを許してくれるだろうか」
一人ごちるカムパネルラに、ジョバンニはけげんな表情。それでも、窓に広がる壮大な宇宙の星を眺めながら、天の川の発掘現場を訪れたり、鳥を捕る男に出会ったり、楽しい銀河の旅は続きます。
「切符を拝見します」
突然現われた車掌に、ジョバンニは青ざめます。どうしよう、切符なんか持ってない…追い詰められ、夢中でポケットの紙切れを取り出すジョバンニ。
「これは…三次空間からお持ちになったのですか?」「なんだかよくわかりません」
それは、どこまでも、本当の天上にさえ行ける切符だったのでした。

いつの間にか、車内には女の子と幼い弟、家庭教師の青年が立っています。北の海で船が沈み、気がつくとここに来ていた…そんな身の上を語る青年。カムパネルラと仲良くする女の子に、ジョバンニは嫉妬したりもしますが、いつしか打ち解けていきます。
そうこうするうちに、サウザンクロスの停車場が近づきます。
「私たちはここで降りるのです」
巨大な天の十字架にぬかづく人々。青年たちの姿もその中に消え、車内にはジョバンニとカムパネルラの二人きりとなります。どこまでも一緒に行こう、ジョバンニの言葉にうなずきながらも、窓の外に母の姿が見えると言うカムパネルラ。
「あそこにいるの、ぼくのお母さんだよ」

暗転。

振り向くジョバンニ。そこにいたはずのカムパネルラの姿はなく、ジョバンニは一人きりになっていました。

泣きながら目を覚ましたジョバンニが街へ戻ると、大勢の人が川の中を探しています。級友から、カムパネルラが川に落ちたことを聞いたジョバンニは、彼との永遠の別れを知るのでした。

エピローグは再び清六のシーン。物語を読み終えた彼の後ろに、いつしか勢ぞろいする登場人物たち。厳かな合唱が湧き起こり、光に包まれて、舞台はフィナーレを迎えました。

劇中では、「注文の多い料理店」「水仙月の四日」「いちょうの実」「風の又三郎」「よだかの星」といった宮沢賢治の名作が、各舞踊団体によって表現され、盛りだくさんな内容になっていました。また、劇中の音楽は全て生演奏で、舞台に彩りを添えていました。

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